『自主管理とは何か?』第三回 「労働者統制」
皆さんこんにちは。社会の夜電です。
今回も『自主管理とは何か?』を噛み砕いて見ていきます。
前回は共同管理の章を読んでいきました。
共同管理は手段のみを労働者が選択できるのに対し、自主管理は手段、目的ともに選択できるという違いがありました。
さて今回は「労働者統制」を読んでいきます。
【労働者統制という言葉の意味】
まずは言葉の意味について触れていきましょう。労働者統制という言葉を調べるとコトバンクにはこのような記述がありました。
「…広義には,資本主義のもとで職場・企業における資本家の経営権限を侵食し,労働者による自主決定=自治の領域を拡充していく営みと,公有化された経済体制のもとで労働者が管理主体として各レベルの運営を担う営みの双方をさすが,狭義には前者を労働者統制とし,後者を労働者管理おして峻別する。…」
〈出典:https://kotobank.jp/word/労働者統制-1440254〉
いやはやとても長いですね(`・ω・´)
ここでは労働者管理という言葉についての説明の中で労働者統制について触れられています。
要するに、労働者統制とは会社、企業の経営権を労働者のものにするということです。
【労働者統制と共同管理との比較】
前回お話しした共同管理と労働者統制を比較して『自主管理とは何か?』には次のように述べられています。
「彼らは決定権を企業主と《分け合》わなければならない時よりずっと実質的な形で《自主管理》しているということになる」(p30)
前回もお話ししたポイントですが、経営の決定に参加するのが共同管理です。これに対して労働者統制は決定に参加するのではなく、それ以上に決定権さえ握ってしまうところに違いがあるようです。つまり労働者統制の方が共同管理より労働者の自治が認められるということです。
【労働者統制と自主管理の違い】
「企業の経営の決定権さえも労働者が握ってしまったならばそれは自主管理と言えるのではないか?」
こう思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、『自主管理とは何か?』には次のように説明されています。
「労働者統制は自主管理に向けての前進としては共同管理よりずっと偉大なものであるが、それはまだ自主管理ではない。なぜか?まず第一に、この統制が賃金制度も、生産の全体面における資本家たちの指導的役割をも問題にしないようないくつかの点に対してしか行使されたいないからである。これは、労使双方のいずれか一方を無くすことによって階級対立を全面的に除き去ろうとする全体行動であるというより、むしろ敵を悩ませるだけのものにすぎない。」
「闘争のこの段階では、労働者は自分たちだけで工場を指揮することも、どのような物を製造すべきかの決定権さえも要求しない。この点では、労働者協同組合の方が自主管理に近いのではないだろうか?」(p30)
説明されているポイントは労働者統制の行使の範囲が自主管理に比べて狭いということ。そして労働者協同組合の方が自主管理に近いモデルだということです。
(※労働者協同組合については次回説明します。)
では労働者統制の行使には具体的にどのようなものがあるのでしょうか。
本書には例として次のような記述がありました。
「《労働者統制》は労働条件の改善や、その方が望ましい場合には搾取形態の若干の緩和、そうしたものを生じさせるような譲歩を企業主から奪い取るためのー主としてストライキの際のー闘争的介入と解されている。イタリアにおいて、とくにフィアット社の労働者がとったのはこのような行動であった。」(p29)
労働者統制で労働者に与えられた行使の具体的なものを全て列挙できるほどのデータは集まりませんでしたが、ここには一例として労働条件の改善やストライキが行われたようですね。
労働者統制の中で労働者が具体的にどんな行使を行えたのか、もし他にもデータがわかる方がいらっしゃいましたら、ご指摘くださいませ。
【まとめ】
今回は労働者統制を読み込んでいきました。
今回のポイントは以下の通りです。
①労働者統制は企業の経営の決定権を握る。この点で、決定への参加しか持たない共同管理とは異なる。
②自主管理に比べれば労働者による行使の範囲が限定的。
次回は「協同組合」を読んでいきます。